「アブトロニック」
というEMSマシンをご存知でしょうか?私はこの名前を再び耳にして懐かしく思いました。というのも、中学3年、高校1年ぐらいのころにものすごい流行ったEMSマシンで当時は商品としては斬新だったのでものすごい売れました。
「低周波運動」「電気の力で筋肉を動かす」「くつろいでいる間にも筋肉を動かしてくれる」など何もしなくても勝手に筋トレしてくれるというニュアンスでした。その後、パクリ商品がいくつも登場しました。
アブトロニックではなく、アブ○ムニックとかね。当時は、それもベルトタイプのもので、お腹、バスト、腕、脚につけられる仕様。高校1年生だった私はひょんのことからアブトロニックを手に入れることに成功しました。
バラエティー番組で小川直哉さんが「アブトロニック使ったら腹筋攣ったwww」といってましたので、凄い効果があるんだろうなと思って使ったんです。初めは強度を軽く。そして、強度を強く強く、最強までにしました。
確かに腹筋に効かせることはできましたが微妙。角度を間違えると電気でびりびり痛いです。当時のEMSマシンはそんなもんでそこまで精度は高くはありませんでした。そのあとに、シックスバッドなどが登場。
最近は、アブトロニックもバージョンアップしてアブトロニックX8などというものがあります。これは昔のアブトロニックと比べると随分と性能は高くはなっているようですが、そもそもEMS運動で筋肉はつけることができるのでしょうか?
EMS運動とは何か?

1.EMSマシンで筋トレを行うことは可能
EMSとは、Electrical Muscle Stimulation(エレクトリカル・マッスル・スティムレーション)の頭文字をとったものです。本来であれば骨格筋は随意運動に動かすことができます。つまり、脳が動かせと指令を出し、筋肉を動かします。
例外としては、反射です。ベンチプレスなど重量を持ち上げる際には脳からの連動が必要ですが、ボールが飛んできたときにスッとよける。スパーリングでパンチが来た時にすっとよける。これはいちいち脳の伝達ではなく反射神経の力です。
EMSはいずれともことなり皮膚の上から低周波を加えることによって電気の力により筋肉を自分の意志と反して動かすことができるのです。ですので、全く力を抜いていても勝手にEMSマシンが力を入れてくれます。
2.一応筋肉をつけることは可能
では、実際にEMSマシンを使ったからと言って、筋肉がつくものなのでしょうか?これに関してですが、米国の臨床実験でも筋肉が増強されることは明らかになっています。何よりも、スポーツ選手の中でもEMSのトレーニングを重視してる選手もいます。
長友佑都選手やクリスティアーノ・ロナウドは宣伝でシックスパッドを使用しているのは明らかですが、使ってみればわかりますが筋肉の収縮と脱力が行われるので十分に筋肉をつける要素はあります。
私はアブトロニックを初めて行ったときは、体幹など筋肉の面積が大きなところだと微妙な結果でしたが、ふくらはぎや腕に使うと初めのころは軽い筋肉痛になったこともありました。ですから筋肉がつかないということはないです。
EMS運動で劇的な効果は期待しないほうがイイかも。

しかし、電気の力で筋肉を動かすとはいえ、これを使えばテレビコマーシャルのように、ロナウドのように筋肉ムキムキになるということは残念ながらありません。たとえば自重トレーニングを例にしてみてもわかります。
1.筋刺激が弱い
腕立て伏せを頑張ってもあるところで限界がみえます。筋肉は肥大しにくいですし、力も増えにくいです。それはなぜか?筋肉は現在の限界値に近い刺激を与え続けることで強くなっていきます。ところが、自重トレーニングの場合は一回の負荷は限界値とは程遠い。
そのため、神経系の発達が行われないのです。EMS運動もそれと近いところがあります。ただ、筋肉を収縮しているだけなので神経系への開発が行われにくいです。挙上量を増やしたいならとにかく高重量で行って、神経系の開発を狙います。
それそこ、筋肉の増加となれば、ストレッチ&スクーズの動作が必要になります。ところが、EMSマシンにはスクイーズあるけどストレッチの動作がありません。完璧なトレーニングを求めるならストレッチは絶対に必要です。中にはストレッチのほうが重要な種目もありますあらね。
2.CMのように腹筋はバキバキに割れないのか?
残念ながらアブトロニックX8を使用しても腹筋がバキバキになる可能性は低いです。なぜなら、これまでの説明の通り、EMS運動による筋刺激効果は非常に弱く、腹筋を太らせるほどのトレーニングができないこと。
そして、腹筋をバキバキにしたいならやはり、脂肪を落として腹筋の割れ目を目立たせることのほうが重要です。ですので、腹筋を割りたいなら食事制限が何よりも大事になるのです。
EMS運動でトレーニングを行う目的とは?

これまでの話からもEMS運動というのは、確かに電気の力で筋肉を動かすことができるので、楽といえば楽です。ただ、高負荷をかけれないため、筋肥大や筋力アップに関していえば全く向いていません。
では、何のためにEMS運動を行うのか?もちろん、広告に書かれてある文言の通り、ジムに行かずに、それを装着してるある程度鍛えるのでもよいです。大きな負荷をかけることはできないけれども、軽い運動を自動化させるということならEMS運動がよいです。
特に、ウエイトトレーニングをされている人であれば無理な重量を扱って関節を損傷してしまうリスクも考えられます。その時に怪我をしてしまって高負荷のトレーニングができないときなどは、EMSマシンを装着してリハビリトレーニングに励むのもおすすめです。
なので、EMSマシンを使用すべき人は、
「手軽に筋肉を動かしたい初心者」
「運動経験、トレーニング経験がない」
「怪我でトレーニングができない人」
になります。
例えば、運動経験が全くない人がいきなりジムで激しい運動をしたら厳しいです。そのため、これからトレーニングをスタートしよう。という人はいきなりハードなトレーニングをやるのではなくまずはEMS。そこから自重トレーニング。そして、フリーウエイトと徐々にランクアップしていけば体に無理なく鍛えることができます。